ボクシングの対サウスポー・対オーソドックス別の対策と戦術

ボクシングの対サウスポー・対オーソドックス別の対策と戦術

ボクシングの対サウスポー・対オーソドックス別の対策と戦術

オーソドックスorサウスポーに応じた戦略

拳だけが武器であるボクシングでは、右利きなのか左利きなのかで、構えからパンチのバリエーションまで変わってくるのが基本です。ただし人間には右利きの方が多く、全世界でも90%近くが右利きです。つまり左利きの人は1割ぐらいしかいません。となるとオーソドックス(右利き)のボクサー同士の対決が多く、いわゆるサウスポー(左利き)との対戦では、それなりに戦術そのものを変えていかなければなりません。

 

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オーソドックスVSオーソドックス

最も多いカードが右利きVS右利きで、スタンディングポジションは両者ともに、前手の親指の位置が一直線になる様に立ちます。つまり一直線上に両者の親指と体の中心が並んでいる状態で構えるのが基本です。そして試合開始とともに、それぞれの戦略でステップを踏んでいくことになります。

 

基本のポジションをこの様にセットするメリットは、牽制となるジャブに対して相手が右ストレートを合わせ難くなることです。ということは、相手のジャブをパリーでかわす事も簡単だということで、攻守ともにメリットがあります。

 

ですが、互いの前手である左手の小指同士が一直線上にくる立ち位置ですと、相手のジャブが自分の右ストレートの軌道と重なり、簡単にブロックされてしまうことになります。また、互いの親指位置がクロスする位置に立つと、互いに正面を向く状態に近くなり、正面からジャブを受けてしまうので良くないのです。

 

ですが、試合中に無意識で先のポジションに入ってしまうことが多々あります。もし小指が一直線に並ぶ位置なら、相手のジャブに右クロスの形で右ストレートを被せれば良いですし、親指が中に入るポジションではジャブが当たり易い位置関係ということで、かなり強めにジャブを打つと効果的です。

 

オーソドックス同士は有利・不利?

先に説明した対処法は、とどのつまり相手にも利用できる戦法です。ですから、試合中はどのポジションで対峙しても、相手に有利にならないように常に注意をしなければいけません。自分から攻撃を仕掛けるにしても、受け身になるにしても、適切な対応ができるように考えながら戦術を立てるのが肝心です。

 

基本のスタンディングポジションに移動するために!

絶えずポジション調整をしながらクレバーに戦う事が望ましいのですが、自分が望むポジションへ移動するにも練習が必要です。相手も自分に有利なポジションへ移って行こうとしているわけですから、その先を読んで行動するのが大事です。

 

練習方法としては、ミット打ちが効果的でしょう。パートナーにミットで自分の視界を遮ってもらいます。その状態でパートナーがランダムに体を動かして行って、それを追いかけながらベストポジションの確保を取る練習法が良いでしょう。

 

ですが、ただやみくもに移動するのではなく、基本はミットで隠れたパートナーの右目が見える位置へと移動する事です。この位置まで動けば、基本姿勢の親指と親指が直線上にあるポジションが確保されます。いちいち足の動きを確認する余裕がないということを理解して、あくまで相手の顔を見ながら、ベストのポジションが取れるように練習しましょう。

 

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オーソドックスVSサウスポー

右利きの人がサウスポーのボクサーと対戦するのはやや不利だと言えます。何故なら、サウスポーの方はいつも右利きのボクサーと対戦していて、体戦術もしっかりと心得ているからです。その反対に対サウスポーでは、オーソドックスボクサーに経験不足のデメリットが出てきます。

 

そこで一般的な対サウスポー戦術として、とにかく相手の外側に立つのがセオリーです。右に回り込むステップで相手の左外側をキープすれば、自分の右ストレートはヒットしやすくなります。また右フックをちょうど相手の死角から飛ばすことが可能ですし、相手の左ストレートが打ち難くなるメリットも得られます。

 

インサイドへの移動で攻撃を仕掛ける!

もちろんサウスポーの方も、外側への移動戦術をガッチリと研究していますので、逆に攻め込まれる可能性があることを理解しておきましょう。そこで、あえて不利になる左回り(内側への移動)で正面に向かうポジションを取る戦術があります。

 

この立ち位置は互いに利き腕のパンチが届くポジションであるために、必ず相手の左拳には注意を払わなければなりません。その上で攻撃パターンを組み立てて、効果的に攻めていくようにします。

 

ポイントは、正面に向き合うとサウスポーのボクサーのガードに隙間ができることです。つまり自分の左拳が、ちょうどガードの合わせ目に当たるので、そこからジャブをついて体勢を崩す戦法が取れます。

 

また、このポジションでは相手が左ストレートを打ちやすい条件になりますが、それをカウンターで迎え撃つチャンスが得られます。もちろん、利き腕の強烈な左ストレートを確実にディフェンスするテクニックを持って初めて実践できる戦法です。具体的には、まずインサイドに廻り込み、相手に左ストレートを打たせる隙を作ります。そして左ストレートが顔面に飛んできたらブロックせずにヘッドスリップで外側に流しつつ、突っ込んできた顔面めがけて右ストレートを叩き込む必殺のカウンターを放つのです。

 

対サウスポーでの有効なガード法

相手がサウスポーの場合は、自分が内側に移動すると相手の左ストレートの軌道に入ってしまいます。それはかなり危険度の高いポジションですので、戦略上インサイドに入る必要がある場合は、右のガードを顔の前に持ってきて、パーリング・ブロッキングで防御しやすい体制にしておきましょう。

 

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対サウスポーではヘッドスリップに要注意!

オーソドックスのボクサーがサウスポー相手に対して、ヘッドスリップの防御を使う時には注意しなければいけません。相手の右パンチをヘッドスリップで受けると、頭は相手の内側に流れていきます。それでは相手の左ストレートの軌道上に入ってしまい危険です。そこでヘッドスリップを使う場合は、相手の背面側にひねられる時だけにします。あるいはヘッドスリップではなく、スウェーバックでディフェンスすることも有効です。

 

対サウスポーではジャブ的な右ストレートから左フックが有効!

サウスポーに繰り出す右ストレートは相手に見えやすいというデメリットがあります。互いの前手のグローブを中心に、互いの体が90度に開いてしまっているからです。そこで右ストレートはおとりとしてジャブ程度に繰り出して、近距離にある左の拳をフックで叩き込むのが有効です。右ストレートを軽く放てば、相手は簡単にヘッドスリップやスウェーバックでかわしながら、カウンターで左ストレートを返そうとするでしょう。このパンチに左フックを合わせれば、距離が近い左フックの方が先にヒットします。

 

オーソドックス同士でもインサイドへのヘッドスリップは要注意

オーソドックス同士でも、相手の利き腕のストレートをインサイドにヘッドスリップして防ぐのは危険です。右ストレートに対しては、前足外側にヘッドスリップして頭を相手の背面側に逃がすのが得策でしょう。この位置ならば、相手の脇腹への攻撃もしやすいので、カウンターにボディブローを打ち込みやすくなります。

 

オーソドックスVSサウスポーのボディ打ちテクニック

みぞおちへの利き腕のストレート

みぞおちへの利き腕のストレートは、同じ利き腕の対戦相手には打ち難いことからあまり使われる事がありません。それは互いの体が斜め並行の状態で、みぞおちは前手のガードに隠れてしまうからです。しかしオーソドックスVSサウスポーなら、どちらにとっても効果の高いパンチになります。それは向き合っている体の角度が開きあっているからで、利き腕からのストレートがボディに対して垂直に当たるという条件が揃います。

 

前足側の脇腹への攻撃

オーソドックスはサウスポーに対して絶えず脾臓(ひぞう)を晒している状態になり、ここを狙われるリスクがあります。脾臓へのパンチはダメージが大きく、要注意です。ただし反対側になる肝臓(レバー)を隠せるメリットがあります。反対にサウスポーは相手に絶えずレバーを晒している状態で、オーソドックスボクサーは前足側の脇腹をめがけてアッパーやフックを叩き込むと効果が高いです。例えば、サウスポーのボクサーが右ジャブを打ってきたとします。それをヘッドスリップでかわしておいて、空いている右脇腹へ左フックを叩き込むことができます。

 

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サウスポーのボクサーはみぞおちやレバーを狙うべき!

反対にサウスポーのボクサーは、相手の右ストレートをヘッドスリップして、ガードの空いている左脇腹へボディブローを打ち込むと効果的です。また右ストレートを出している相手の体はやや正面を向いている事から、みぞおちやレバーを狙うチャンスも出てきます。

 

 

インファイター、アウトボクサーへの有効な戦略

ボクサーの攻撃スタイルを大きく分けますと、インファイターとアウトボクサーになります。インファイターは接近戦で打ち合うのが得意なボクサーで、アウトボクサーは足を使って距離を取り、ミドルレンジから攻撃するのが得意なボクサーです。それぞれに戦い方が違うので、その点を説明しましょう。

 

インファイターが得意とする戦略

コーナーやロープへ相手を詰めて攻撃!

インファイターは基本的に、相手の動きを止めて、べったりと接近した状態でハードパンチを打ち込むのが得意です。その為にコーナーやロープへ追い込んで、相手の動きを封じてから攻撃に入るパターンを好みます。ただし、無理やりコーナーへ追い込む事は難しいので、相手の動きを予測しながら進路を塞ぎ、仕方なくコーナーへ向かう様に仕向けるのがミソです。インファイターはこの点で優れた能力を発揮できなければ、逆に勝機を掴めないと言えるでしょう。

 

相手のジャブをキッカケに懐へ飛び込む!

アウトボクサーはジャブを多投して距離を確保します。そのジャブをヘッドスリップなどでかわして懐に入ると有効です。またウィービングやダッキングで、相手の攻撃をかわしながら距離を詰めていく戦法もあります。

 

アウトボクサーが得意とする戦略

リング中で大きな円を描きながら移動し続ける!

アウトボクサーの基本的は、ミドルレンジの距離をキープしながら攻撃をすることです。そこでリングを広く使って円を描くように移動をしていく戦略を好んで用います。そしてジャブを連打して、相手が懐に入って来られない状態を作ります。また相手が突っ込んできたら、よりスペースが空いている方へ素早く身をかわすのもポイントです。

 

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突っ込んできたら右ストレートで迎え撃つ!

インファイターはとにかく距離を詰めようと突っ込んできます。ジャブだけでは相手の動きを止めきれないかもしれません。そこでジャブで牽制しておきつつ、相手が踏み込んだら、すかさず右ストレートでカウンターを浴びせるのが効果的です。

 

左フックをひっかけて外側にターンしながら距離を取る!

インファイターが懐に入って来そうになったら、上手く左フックを打って、ガードなどにヒットした拳距離を支点として外側にアウトステップします。この時に左フックの威力が弱いと素早い移動ができずに、相手に狙い撃ちされてしまう危険があるので要注意です。

 

 

コーナーやロープへ追い詰められた時の脱出法

相手の腰を取ってポジンションを入れ替える

インファイターにコーナーまで詰め寄られたら、そのままじっとしていては危険です。相手が決定打を打つ前に脱出しなければいけません。そこでコーナーやロープに詰まったら、
相手の腰を抱くようにして体を入れ替えるのです。チャンスとしては、相手の右パンチを利用すると良いでしょう。右パンチをかわしながら、左手を腰の方へ回して、相手の体を巻き込む様にしてグルッと体を入れ替えます。

 

肘を使ってポジションを入れ替える

それよりも小さな動きで脱出するテクニックがあります。同じようにコーナーなどに詰まったら、相手の左パンチを利用します。そのパンチをかわしつつ、右手でその肘を押すのです。すると相手はバランスを崩しますので、さっと体を入れ替え、相手がぐらついているところに攻撃を仕掛けることができます。ポイントは確実に肘を押すこと、二の腕では相手に踏ん張られてしまうので要注意です。

 

Q&A

Q:相手と対戦する時は、どこに視線をもっていくと良い?

A:一か所を凝視してはだめです。基本的には漠然と相手を見るようにしてください。そうすることで、こちらの動きが読み難くなります。反対に目を凝視していると、相手が目でフェイントを掛けてきた時にかわしきれませんし、相手の体の動きを察知し難いというデメリットが生じます。ポイントは、全体的に顔の輪郭を把握する感じで見るようにします。できれば胸元も視界に入る様な感じで見ると相手の動きが捉えやすくなり、攻守ともに良い動きにつながります。

 

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Q:相手との距離はどのくらいが良い?

A:構えの姿勢によって距離の取り方が変わります。構えた時の重心の比率を前足4:後ろ足6の人もいれば、その反対の人もいます。その範囲内で様々な重心の取り方をする人もいます。日本人選手には前足6分のボクサーが多く、この場合は互いの前足のつま先に30cm前後の距離をキープします。この状態は互いのポンチが届くギリギリの距離で、守り易いポジションだと言えます。しかし、攻撃を仕掛ける際には踏み込んでからとなり、相手にかわされやすいこと、カウンターを狙われやすい事を知っておきましょう。

 

またどちらかが5:5の構えや4:6にして重心を後ろにキープしているならば、こちらは5cmほど詰め寄る感じにするか、そのままの状態で上半身だけ5cm程前に出すかします。上半身で調整する場合は、相手がパンチを打ってきても上半身の移動だけで届かない位置へ逃げられますし、小さな踏込でも相手へ鋭いパンチが打ち込めるメリットがあります。とは言っても、この理論通りに上手く行くとは限りません。何故なら相手も上半身を振りながら距離をコントロールするので、一瞬の隙で互いのポジションがノーステップでパンチの届く位置になってしまうことがあります。つまり、踏み込まずにキツイ一発が放てる距離になるという危機感を絶えず持っておくことが肝心です。

 

Q:踏み込んだ瞬間の足が浮いている問にパンチを打つのが基本?

A:そうです。踏み出した足が着地するタイミングと、パンチがヒットポイントに到着するタイミング(拳を握りしめるタイミング)が同時になるのが理想的です。また、普段からその様に練習するべきでしょう。基本はこうですが、しかし実戦ではわざとタイミングをずらせてパンチを打つこともあります。その変形として飛び込み様のストレートがありますし、後ろ足を残した形で左ストレートの距離を合わせる事もあります。またステップ&左ストレートからの右ストレートのコンビでは、連続して右足を蹴って、その反動を拳に乗せる必要もあります。このようにケースバイケースで、その場に合ったパンチを打つのが肝心です。

 

Q:右ストレートでは前足の膝の状態をどうする?

A:ひとつの決まった形はありません。野球の投球フォームを考えてみましょう。振りかぶってから前足を大きく踏み出して、着地させつつ膝を曲げていき、上半身のしなりを十分に作るために、膝が地面に着くまで沈み込んで投げるフォームをよく見ることでしょう。これを基本形だとすれば、大リーグのピッチャーなどには、踏み込んだ足が着地しても膝を曲げずに、それをブレーキがわりにして、上半身にパワーを集中させながらボールを投げるケースもあるのです。この事はボクシングでも同様で、基本形としては踏み込んだ足の膝を曲げますが、腕力の強いボクサーには膝を曲げずに強烈なパンチを繰り出す人もいます。ただし、そのパンチでKOできる保証は無く、次の流れを作る場合に膝を曲げた状態でいる方が有利なのは確かです。突っ立ったポーズでは、体の動きもそこでストップしてしまうので、新たに動き出すのにタイムラグも出てしまうでしょう。どちらにも長所はありますが、これも人それぞれと言う他はないでしょう。

 

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