ボクシングのロードワークと減量メニュー|ピリオダイゼーションの例

ボクシングのロードワークと減量メニュー|ピリオダイゼーションの例

ボクサーの練習法には、主にロードワークとジムワークが中心となりますが、それは平時のトレーニングスタイルで、いざ試合が組まれた時は、試合対策の練習メニューを作る必要があります。この試合用トレーニングは2~3ヵ月間をかけて行われるもので、期間を区切ってメニュー内容を変えていくのが一般的です。この期分けをピリオダイゼーションといって、練習だけでなく食事等の生活習慣まで含めたスケジュールが組まれる事になります。ここで一つ、サンプルを紹介しましょう。

 

平時のトレーンング内容はロードワークとジムでのルーティンワーク

基礎体力の向上と個々のボクサーのパフォーマンス向上のためのトレーニングをします。

 

スポンサードリンク

 

2カ月後に試合が決定してからのメニュー

最初の1カ月

〇集中的にトレーニングへ打ち込めるように、トレーニング内容に適した場所でキャンプを張る事があります。足腰を鍛えるといった基礎体力の強化が必要となりますので、ロードワークのロケーションには気を配ると良いでしょう。よく砂浜の海岸やアップダウンのある山間部を選ぶことが多いです。

 

○キャンプでもメインはジムワークです。対戦相手の分析結果から、試合用の戦術を練って、具体的なトレーニングを行っていきます。

 

その後の2週間

○対戦相手を想定したスパーリングを取り入れていきます。対戦相手と同タイプのスパーリング・パートナーを依頼して、実践的に試合を組んでトレーニングを進めます。ポイントは攻守のシミュレーションの徹底と、自分の弱点の克服です。

 

次の1週間

○この時点まではかなりハードに練習を詰め込みますが、試合前2週間ともなれば、体力の温存も気にしなければなりません。そこで練習量を落としながら体調を整えていきます。

 

試合1週間前

〇スパーリングをこなしながら、実戦での動きを最終調整していきます。ここでは体調管理と精神面での調整がポイントとなります。

 

こうして試合に臨みますが、試合の後は勝敗に拘わらずしっかりと休養するようにしてください。蓄積したダメージやストレスを解消する時間として1週間は休みを取ります。

 

試合前2か月間の練習の意義

試合のセッティングが決まるのが2~3ヵ月前ですから、試合用のトレーニングを開始するのも2~3ヵ月前になります。対戦相手に合わせた特別メニューで練習をする必要があるために、それ以前から試合用のメニューを組む事は難しく、それまでは普段通りの練習を熟していかなければならないのです。また試合が決まってからも、初めのひと月くらいは基礎体力強化のトレーニングと、個々のスキルアップをテーマにした練習をするのが一般的で、スタミナやパンチの完成度をアップさせる練習内容を実践するためにキャンプをします。3分・1ラウンドの練習ばかりではなく、10分間サンドバック打ちとか、長距離のロードワークなどを取り入れて、試合でバテ難い体造り・キレとスピードのある体造りを優先します。特にロードワークは重要で、練習の半分を費やすのが普通です。徹底的に走り込んで足腰を造り上げ、キツいトレーニングにもついていける体が完成しますし、怪我や故障のし難い体造りにも貢献します。

 

そこでキャンプの間は1日のトレーニングメニューの内の半分をロードワークに充てます。この時に走るルートの選択を考えましょう。普段の平坦一本やりのルートでは不十分です。瞬発力や粘りのある筋肉造りのために、アップダウンのあるコースを加えるとか、下半身のポテンシャルアップに、足場が重くなる砂地なども選ぶと良いでしょう。また、アスファルトばかりのルートは関節へのダメージが強いので、土の上を走ることも有効ですし、整地されていないルートを走るならば、バランス感覚の高い体を作ることも可能です。1日に走る距離としては35~40km、つまり毎日フルマラソンをするくらいのつもりで走り込みましょう。

 

対戦相手を想定したスパーリングを始めるのは十分に体が仕上がってからで、それまでのジムワークは普段の延長線上のメニューを基本とします。シャドーやサンドバッグ打ちで、正確で鋭いパンチを身につけていきます。そして対戦相手の試合ビデオを研究し、どういった戦法で行くかを決めてから、それをミット打ちやスパーリングで完成させていく流れです。この戦略造りが最も重要で、相手の得意なパンチや苦手な形をしっかりと見極めて、試合の組み立てまで含めた戦術を、選手とトレーナーと二人三脚で作り上げる事が望ましいでしょう。戦うのはあくまでも自分自身ですから、まるっきりコーチ任せでは勝利に手が届きません。自分の頭と体を使って、自らも戦いに挑むことが大事です。

 

試合前一か月あたりから、実戦的にスパーリング・パートナーを依頼して練習をしていきます。試合相手と同じタイプのボクサーを選び、それまで練習してきた戦略を実践的に行うのです。試合形式のスパーリングで良い点と悪い点を見極め、更に戦略を練り上げていきます。基本的にスパーリングのスケジュールは週3日前後が適当です。また1回のラウンド数は、4回戦の試合なら3~6R、10回戦ならば10~12Rとなっていきます。そしてスパーリング中に、自分の動きやパンチの質など、細かなポイントを全てチェックしていきます。例えスパーリング中でも問題点があれば中断して、対策を講じていくもの大事ですし、スパーリング中に技術アップや新たな能力が引き出される事もあるので、そういった変化を見逃さないように丁寧に練習を行うべきでしょう。ただし、スパーリングでのやり過ぎも禁物です。試合前にダメージが蓄積されてしまうリスクがあり、場合によっては怪我や故障もあり得ます。コンディションを崩さぬように効果的なスパーリングを熟すのもボクサーの必須能力です。

 

スポンサードリンク

 

試合まで3週間というタイミングから、徐々に練習量を減らしていき、試合に備えて最終調整に入ります。キャンプによるハードトレーニングで、心身ともに疲れが溜まっている状態から回復しなければいけません。この点はトレーナーが客観的に見極める部分でもあります。選手は意気込みや興奮によって過剰な努力をしてしまう事が多く、うまいタイミングでブレーキを架け、休む時はしっかりと休ませるように管理しましょう。つまり2ヵ月前からアクセルを踏み続けてフルスロットル状態で走ってきたレースを、いよいよ終盤に差し掛かった頃合いで回転数を落として、無事に最後まで走りきらせるといったコンディション調整を行います。

 

そして試合まで1週間という時点で、試合用のコンディションを整え終えるようにします。この時点で仕上がっていれば、試合までの1週間を余裕を持って臨む事ができるでしょう。もちろん練習は続けますが、メニューは筋肉や心肺機能を刺激する目的のトレーニングです。ゆっくりと長いスパンで動く内容の練習を行います。試合3日前には心拍数を短期間で高める運動や全力を出す運動などでコンディション調整をしていきますが、練習量を落し過ぎてもいけません。良い感じに仕上がっている体をそのままキープさせる形で、ある程度の練習を行っていくべきでしょう。内容に関しては個人個人に合わせます。ポイントは、せっかく暖めた体とハートを冷やさずに、上手に疲労やストレスを抜いていくということです。ですから、単に休息を取れば良いという訳ではありません。一例をあげるならば、瞬発力のある速筋に大きな疲労があるならば、練習では持久力系の遅筋を中心に使うメニューにすることができます。この形で運動を行うと速筋が十分に解れて、乳酸が抜けていくと言います。プロのボクサーになるならば、こういった体のコントロールを経験から身に着けていく必要がありますし、トレーナーも客観的に状況判断をして、指導・サポートを行うべきでしょう。

 

ここで具体例を紹介しましょう。平時は日曜日を完全休養日にして、試合前の3週間以降は木曜日も完全に休養して心身ともにリフレッシュさせるといったカリキュラムがあります。こうすると1週間を2分できて、2~3日間だけに集中した練習が可能になります。その分練習の質が向上し、内容の濃い時間が得られるという訳です。これは小出監督直伝の練習方法としても有名です。1日休みを増やすことで、逆に練習量をボリュームアップする事ができます。

 

それから減量についてですが、キャンプの間で徐々に目標体重まで、体脂肪率を減らす方法が効果的です。こうして減量目標まで2kgと絞ったら、試合前の数日間に脱水させて減量を完成させます。2kgの減量なら2Lの汗でカバーできることから、1,2日しっかりと汗をかけば済んでしまうのです。ボクサーによっては極端な脱水を行って計量通過を狙うケースがありますが、これでは身体機能まで麻痺する危険もあっておすすめできません。減量のポイントは、最も選手が軽快に動けるベストウェイトを見極めて、試合までに徐々に絞り込んでいくことです。

 

スポンサードリンク


 
基本 トレーニング ストレートの打ち方 ジャブの打ち方 テクニック ガード