ボクシングのミットの持ち方と効果的な受け方

ボクシングのミットの持ち方と効果的な受け方

ボクシングのミットの持ち方と効果的な受け方

ミット打ちが実戦でのヒットポイントと距離感が異なるという意見によって、あまり重要視されなかった時代があります。しかし現在では、その解釈が不適切だと分かり、今やジムワークの主軸として利用されています。ここではミット打ちによるトレーニング術を詳しく説明していきましょう。

 

ミットの持ち方

ミット打ちを始める時の準備態勢

ミット打ちでは、トレーナーが相手ボクサーの代わりになってパンチを受けるものです。ですから、トレーナーも軽快なフットワークを利かせてヒットポイントを適度にずらす工夫が必要となります。ミット打ちはサンドバッグ練習と違って、対戦相手をイメージした実践的な練習です。まず左右のミットを内側か下に向けて、自由にフットワークを始めます。この時に選手もトレーナーのフットワークに応じてフットワークをしつつ、自分の得意な位置・距離をキープするように動きます。ではオーソドックス(右利きのボクサー)のミット打ち練習法を紹介しましょう。

 

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左ストレート

単発の左ストレートを練習させる時、トレーナーはテンプルなどのヒットポイントで左ミットを正面に向け、選手はミットが自分の方に向いた瞬間に、間髪を入れずに踏み込んで左ストレートを放ちます。ポイントはできる限り実戦に近いパンチを打たせることで、ミットを出す位置が顔から離れないようにする必要があります。オーソドックスの左ストレートはジャブですから、牽制のパンチとしてアゴよりやや上部の顔面を狙わせることも大事です。ミットには2か所のターゲットがあるので、適宜に打ち分けをさせてください。

 

右ストレート

右ストレートのミット打ちでは、右ミットを打たせるように相手に向けます。そして左ミットをやや手前に出して、右パンチに対するガードとするのがコツです。こうすると相手から見た右ミットがガードに隠れる格好となり、選手にストレートを真っ直ぐ放つように指導ができます。つまり、フック気味の癖のある右ストレートを修正させるにも効果的な練習法です。

 

左フック

左フックのヒットポイントを右アゴに定め、左ミットを自分の右アゴに着ける(オカマのポーズ)ように構えます。この時のミットの掌側(パンチを受ける面)の角度が、実際に左フックを放った時のヒット面と一致します。

 

左ボディアッパー

右のミットで選手の左顔面を打ちながら、同時に左ミットを右脇腹(レバーの部分)に伸ばします。選手は右ミットのパンチをヘッドスリップでかわしながら、左ボディアッパーを放つ格好になります。単に左パンチを打たせるのではなく、防御テクも同時に練習できる効果的なミット打ちになります。

 

左アッパー

左アッパーを打たせる時は、左ミットを下向きにセットするようにします。ただし、アッパーに関しては反対のミットで受けてもOKです。ミット打ちの基本は同じ方の手で受けることですが、パンチを反対側のミットで受けることで、選手は拳の回転を効かせた捻じり込みのアッパーを打つ練習になります。この練習法には、相手のガードのわずかな隙間を縫って貫通させる効果があります。

 

その他のパンチのミット打ち

〇右ボディアッパーは、左肘を相手の方に突き出す感じにして、左ミットを自分の腹の方に向けながら掌側を選手に向けて受けます。
〇右アッパーは、右ミットをやや下向きにした体勢で打たせます。
〇左ボディストレートは、右ミットで自分のみぞおちを抱え込むようにセットします。選手はミットの甲を打つ格好です。
〇右ボディストレートは、反対に左ミットをみぞおちにつけます。この時にトレーナーは右ストレートを打って、選手が頭を左にズラすクセを覚え込ませましょう。ボディストレートではカウンターを顔面にもらうリスクが高いので、セットで練習します。
〇右フックは右フックの反対に、右ミットを自分の左アゴにつける感じでセットします。

 

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サウスポー選手のパンチの受け方

では、サウスポーの選手のミット打ちに移ります。先のオーソドックスのパターンとは異なる部分もあるので、注意して読んでください。

 

右ストレート

オーソドックスVSサウスポーでは前手が非常に接近しているために、ジャブの応酬になりやすい点を押さえておきます。トレーナーはオーソドックスのスタイルで、左手・左足が前に出る構えです。そこで右ストレート(ジャブ)は右ミットで受けます。

 

左ストレート

左ストレートは左ミットを叩かせます。ポイントはオーソドックスの右ストレートと同じです。

 

右フック

右フックは右ミットを自分の左アゴにぴったりと付けてパンチを受けます。このミットの掌の角度が実戦と同じになります。

 

左フック

左フックは左ミットを自分の右アゴに付けて受けます。

 

右アッパー

右アッパーは右ミットで、ポイントはオーソドックスの左アッパーと同じで、トレーナーは左手を伸ばし、選手を右側へとアウトステップさせてから打ち込むクセを付けさせるように練習します。

 

左ボディアッパー

左ボディアッパーは左ミットで、オーソドックスの右ボディアッパー同様に、右肘を相手の方にパンチ気味に突き出して、左ミットを自分の腹の方に向けながら掌側を選手に向けて受けます。

 

 

オーソドックスの選手に対サウスポーのミット打ち練習

この時ミットを持つトレーナーはサウスポーの構えで練習します。つまりファイティングポーズは右手・右足を前に出す格好です。フットワークもサウスポーに合わせて動くのがポイントになります。

 

左ストレート

左ストレートは左ミットで受けますが、この時に右ミットを前方へ出して左ストレートの軌道を妨害してあげます。すると選手はアウトサイドへ移動して攻撃するクセを付けることができます。

 

右ストレート

右ストレートは右ミットで受けますが、アウトステップをさせてから打たせるように練習します。

 

左ボディアッパー

右ミットを相手の方に突き出して、選手にヘッドスリップなどでかわさせながら左ボディアッパーを打たせます。そのパンチは左ミットで受けます。

 

左フック

サウスポーの構えで、左ミットを右アゴに付けた「おかま」のポーズでパンチを受けます。

 

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コンビネーションの打たせ方

実際のミット打ちでは単発のパンチ練習よりも、むしろ使用頻度の高いコンビネーションを練習する機会が多いです。その際のミットさばきから正確なコンビネーションの打たせ方まで、基本的なミット打ちを説明します。ここで紹介する基礎が分かれば、その他のコンビネーションへの応用もできるでしょう。

 

ワンツーフック

基本的には左ストレートも右ストレートも、どちらのパンチも右ミット一つで受け止めます。また右ストレートからの左フックのコンビの場合は、右ストレートを左で受けた流れで、そのまま左ミットで左フックも受けますが、基本の「オカマのポーズ」が間に合わないので、ミットは顔の前にセットします。

 

ミットの位置はできる限り実戦的に!

ミットをファイティングポーズのように構えて、そのスタンスでヒットポジションをセットする人もいますが、それでは実際の相手の体よりも手前を叩く格好になり実践的ではありません。左右のミットを開いて、左パンチは左ミット・右パンチは右ミットの基本形で打たせるとしたら、構えるミットの位置は、自分の体にぴったりと付けてセットすることが肝心です。それでワンツーの時は左手を顔の前に持ってきて、左ミットだけで左右のパンチを受けることになります。

 

またヒットの瞬間はミットを若干引くようにして受け止めます。こうする事で選手の拳へのダメージが軽減できること、相手にヒットした時と同じ感触が得られます。なぜなら、パンチがヒットした時に、相手がそのパンチを押し返すようには反応しないからです。この点を理解せずに、ミットでパンチを前方向に叩いてしまうのも考えものです。現実的ではないのと同時に、ヒットポイントも随分前にずれてしまうからです。それでは距離感がずれて、腕の伸びが足りずに、足から腰の回転率も不十分となりますので要注意です。

 

 

左のコーディネーション

左ストレートから左フック、そして左ボディフックのコンビネーションの受け方は、まず左ミットに左ストレートを打ち込ませます。その後即、左ミットを右のアゴまで持っていって「オカマのポーズ」を取り、そこに左フックを打たせ、今度は右ミットを内側ひねりの形にして、右ミットの甲を右脇腹に付けて、選手に左ボディアッパーを打たせる流れです。うち終わりにはステップバックで安全圏への移動もセットに入れておきましょう。このコンビ打ちのポイントは、トレーナーのミットさばきのスピードです。もたもたしていては切れ味のあるコンビにはならず、完成度も上がりません。

 

実戦さながらのイメージ作りを!

場合によっては、左ミットで選手にパンチを出しながら、右ミットで左ストレートを受ける様な練習も必要です。実戦では自分よりリーチのある相手と距離の制し合いをしなければなりません。自分の間合いに持っていくテクニックを身に着けさせることが大事です。

 

同じ理由で、差し出すミットの位置を微妙に変化させて、対戦相手に合わせたトレーニングも必要です。例えば前屈みのクラウチングスタイルのボクサー対策では、ミット打ちでもミットは前方に構えるのがセオリーです。反対に懐が深いアップライトスタイルのボクサーには、ミットをやや引いたポイントに置くようにします。

 

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ミット持ちの反撃方法

ミット打ちでは、単に選手にパンチを打たせるのではなく、ミットでパンチを繰り出すことも必要です。実戦では互いに攻撃をし合いますから、その点をリアルに再現することで、より実戦的な攻防テクニックが身に着くのです。

 

ミットで左フックや右ストレートを返す!

1.先に説明したコンビネーションのミット打ちの最中に、左ミットでフックを返すことができます。

 

2.左ストレートを左ミットで受けたら、即その左ミットで左フックを繰りだします。これを選手は頭を上下させて避けるのですが、例え頭に左フックが当たっても気にせずに、実際の左フックの軌道を通る様に心がけましょう。

 

3.ミットによる左フックを選手はUの字に頭を振って避けますが、下げた頭がトレーナーの左肩の外側に上がってきたところへ、左ミットの甲を自分の左脇腹につけて構えます。

 

4.そこを目がけて選手が右ボディアッパーを打ち込みます。そしてトレーナーは、今度は右ミットを構えます。

 

5.選手は右ボディアッパーを決めた後で、一旦右肩を基本の構えに戻します。

 

6.そして気を溜めてからの右ストレートを叩き込みます。

 

7.トレーナーは、その右ストレートを右ミットで受けて、そのまま反対に右ストレートを打ち返します。選手はミットを左方向にヘッドスリップしてかわします。

 

8.さらに反撃の左ボディアッパーを放ちます。トレーナーはこのアッパーに対して、左ミットをレバーに持っていって受けにいきます。

 

9.左ボディアッパーがミットにヒットした瞬間、すでにトレーナーは左ミットでフックを打ち始めています。

 

10.選手はこの左フックをウィービングでかわします。

 

11.トレーナーの左肩の外側へと移動して安全圏に身を置きます。このタイミングでトレーナーが右ミットを顔の前で構えて選手の左ストレートを誘います。

 

12.選手は十分な間合いから、渾身の右ストレートを打ち込んでコンビネーションの区切りを付けます。

 

このように、選手の放つコンビネーションの合間に左フックや右ストレートを反撃することで、実戦に近いトレーニングを積む事が可能になります。

 

サイドに入らせること

この反撃による左フック(ミットによる)を頭を下げて避けた後に、そのまま背後に体を引いてしまうのはNGです。何故なら、反らせた上半身を起こす時には、対戦相手が正面に構えている事になり、ガードの甘い状態をついて追撃されてしまうからです。

 

ですから、トレーナーが放つ左フックに対し、選手は頭を上下に振って避け、左足を軸にして右回りに回転して相手の背後を取るのが理想的です。このポジションなら相手の攻撃は受け難く、選手は絶好の攻撃チャンスを得られます。トレーナーとしては、選手へこのようなステップワークを身に着けさせるのが好ましいでしょう。

 

左ボディブローを返すパターン

左ボディアッパーはボディブローのなかで最も使用頻度が高く、ヒットすれば強烈なダメージを与えられるパンチです。このパンチもコンビネーション練習で取り入れていきましょう。

 

 

1.まずトレーナーが左ミットで左ボディを打ちにいきます。これを選手は左肘でガードして、右パンチを打ち込む構えに入ります。

 

2.トレーナーはパンチを放ったことで左顔面のガードが開いていますから、選手は相手の左アゴを狙って右アッパーを返します。これをトレーナーがオカマのポーズで右ミットに受けとめます。

 

3.選手が右肩を引いて基本姿勢に戻って一呼吸置く間に、トレーナーは右ストレートを受けるための構えをします。

 

4.その右ミットに右ストレートを叩き込みます。

 

5.フォローに左アッパーを左ミットに打ち込んでコンビネーションに区切りを付けます。

 

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サウスポー選手のコンビネーションの場合

1.サウスポーのボクサーがオーソドックスと対戦する場合のミット打ちで、右からのワンツーは左ミット一本で受けます。また右フックには右ミットで受ける形です。

 

2.利き腕の違う対戦では、前手のストレート(ジャブ)の距離が非常に近いために、このジャブの攻防を制した選手が有利になります。ミット打ちでも前手のストレートを繰り返す練習が必要です。

 

3.サウスポーの選手は相手のジャブに対して外側へ移動して、回り込んだ左サイドから右フックなどでカウンターを決める練習を徹底しましょう。また、この対決では、互いの利き腕からの右パンチVS左パンチでカウンター合戦になる傾向が強く、クリーンヒットでKOとなるケースも少なくありません。ミット打ちでは、右ストレート(ジャブ)に対して左ミットでパンチを返しながら、左ミットで右脇腹を抱えて、選手に左ボディアッパーを打たせる練習が効果的です。左ボディアッパーを放った後に、一旦左半身を下げて気を溜めつつ、相手の体勢が崩れているところに左ストレートを打たせる流れを作りましょう。この時に受けるミットは左です。

 

パターン練習

ミット打ちでコンビネーションの練習をする際に、連打の終わりなどで反撃を加えていきます。反撃の種類にもバリエーションを持たせて、より実戦的な効果を発揮させるように工夫するのがポイントです。選手が反撃をかわしながらコンビネーションを完結できるまで、何度も繰り返しパターン練習を行います。

 

右ストレートから左フック、右ストレートによる3種類のリターン

右ミットに右ストレート・左ミットに左フック・再び右ミットに右ストレートの3連打の後で、次の3パターンの反撃を加えます。

 

A:コンビネーション直後に、トレーナーはすかさず右ストレートで反撃。これを選手が上半身を左にひねって左肩でブロックして、即同じコンビネーションを繰り返していきます。

 

B:トレーナーが左フックで反撃。これを選手はウィービングでかわして、即同じコンビネーションを打ち込みます。

 

C:トレーナーがジャブで反撃。選手はジャブを右後方にヘッドスリップで流して、カウンター気味に同じコンビネーションを打ち込みます。

 

ショルダーブロックの利点

ショルダーブロックによるガードの体勢を相手側から見ますと、ちょうどテンプル部分に隙間ができる様に見えます。ですが、パリー気味に肩でパンチを叩き上げる格好となるので、相手のパンチを跳ね上げるため、テンプルへの軌道を防ぐことができます。それよりも両手で頭をかかえたガードだと、自身で体を縛ってしまうために、相手にボコボコにされるケースが多いのです。ショルダーブロックは防御しながら相手の動きに合わせた柔軟な動きが可能な防御で、反撃を繰り出す体制も整っています。

 

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